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ガンは増えているのか

現在、日本人の2人に1人がガンになり、3人に1人がガンで死ぬと言われている。そのためか、
 
「1950 年代から現在までガンは増えるいっぽうだ。これは、米ソ核実験によって放射性物質が世界中にばら撒かれたからだ。だから今回の原発事故でもガンが増える」

という話を信じている人がいるようだ。本当にそうだろうか。

たとえば、次のグラフを見て欲しい (クリックで拡大)。

ガンの数1

出典:国立ガン研究センターの「がんの統計 '10」の図表10

これは、死因別の死亡率を示したもので、「悪性新生物」となっている赤いラインがいわゆる「ガン」だ。これを見ると、1950 年から増え続けているように見える。では、次のグラフを見て欲しい。


ガンの数2

これは、同じ資料の図表11だ。これを見ると、男性(赤い実線)ではガンがほぼ横ばいで近年は減少傾向にあり、女性(赤い点線)は徐々に減っていることがわかる。

いったいどっちのグラフを信じれば良いのだろうか。


ガンが増えたかどうかを見るには、全人口の中からサンプルをランダムにたとえば 10 万人選んで、そのうち何人がガンで死んだかを比較する必要がある。しかし、1950 年代は高度成長期に入った頃で、「子供ばかりいた」時代だ。それに比べて今は医学が進み、高齢化社会、つまり「老人ばかり」の時代だ。平均寿命の推移は次のとおりだ。

男性 女性
1975 71.73 76.89
1980 73.35 78.76
1985 74.78 80.48
1990 75.92 81.90
1995 76.38 82.85
2000 77.72 84.60
2005 78.56 85.52
2009 79.59 86.44



子供はガンになりにくい
から(※1)、死んだ人の中に子供が多いと、死因に占めるガンの割合は低くなる。これに対し、高齢者はガンになりやすいから、死んだ人の中に高齢者が多いと、死因に占めるガンの割合が高くなる。そのため、選んだサンプルの中に子供が多いのか老人が多いのかを考えなければ、正しい比較はできない。

つまり、世代構成が異なる昔と今のデータをそのまま比較しても意味がないわけだ。そこで、それを比較できるように標準的なモデルに調整するのが「年齢調整」だ。「昭和60年モデル人口」などを基準にすることが多いようだ。


上に挙げた 2 番目のグラフは、この年齢調整を行った後のグラフなのだ。「ガンが増えているか」を判断するには、2 番目のグラフを見る必要がある。


結局、1 番目のグラフでガンが増えているように見えるのは、実は

医療が進んで寿命が延び、ガン以外で死ななくなった結果、死因に占めるガンの割合が大きくなった

ということのようである。本来ガンになるはずのない若い世代の人までがガンで死んでいるのであれば、2 番目のグラフも右肩上がりにならないとおかしいからだ。

極端な話、さらに医学が進んで、ガン以外の病気や怪我ではいっさい死ななくなったとしたら、死因の100%がガンということになるが、それは「ガンが増えた」のとは違うのだ。

※ 2011/9/5 追記
参考リンク:
「がんになりやすい人 なりにくい人」の「年とともにがんになりやすくなる」の項
「そもそもがんとは何か──番外篇(その2)」team nakagawa


at 08:56, greenlig, 放射線

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コメント
k13, 2011/09/05 4:27 PM

「子供はガンになりにくいから、高齢者はガンになりやすい」は正確ではないですよ。癌は箇所によって症状も傾向も違いますし。正常細胞が癌になるプロセスはまだしっかり解明されていないので、結局だれもわからないんですけどね。

greenlig, 2011/09/05 8:07 PM

>「子供はガンになりにくいから、高齢者はガンになりやすい」は正確ではないですよ

参考にしたリンクを追記しました。

yamaoka, 2011/09/13 12:11 PM

興味深く読ませていただいております。ところで、放射能の影響を考察する本文の趣旨からすれば、癌の死亡率よりも発症率を問題にすべきではないでしょうか。
 

greenlig, 2011/09/13 1:42 PM

yamaoka 様

「年々ガンが増え続けている」と主張する方が1番目のグラフを引き合いに出されているようでしたので、「年齢調整」をしないとだめだということを趣旨としたのですが、より詳しいデータをご存じでしたら、ぜひご教授ください。

YTT, 2011/09/15 11:00 AM

明晰なブログ、興味深く拝読させていただいています。

悪性新生物ですが、もともと日本に多かった胃癌に限っては、罹患率・死亡率ともにわずかながら減少傾向にあります。
生活環境の変化やピロリ菌除菌の影響があるのかもしれません。

yamaoka, 2011/09/15 11:10 AM

なかなかちょうど良いものがないのですが、
財団法人がん研究振興財団 がん統計
 http://www.fpcr.or.jp/publication/statistics.html


18. がん年齢調整死亡率・罹患率年次推移 (PDF 487KB)
http://www.fpcr.or.jp/pdf/statistics/fig18.pdf

でしょうか。
古い時期の患者数が分からないのですが、生存率が向上し癌による死亡者数が減少しても、患者数は増えているのがわかります。

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