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ベラルーシと日本の放射能に対する感覚の差

 
福島や宮城で米の放射性物質の測定が始まっているが、当初心配されたほどの量は検出されていない。それでもある程度の量は検出されているわけで、不安に思う人も多いようだ。福島の米は不検出でも買わないという人すらいる。結局何ベクレルまでなら大丈夫なのかわからないことが不安の原因だ。


だいぶ前になるが、NHKスペシャルの『シリーズ 原発危機 第2回「広がる放射能汚染」』という番組が放送された(こちらで見ることができるようだ)。この中で、特に興味深かったのが、チェルノブイリ原発事故の影響を受けたベラルーシの様子だ(上記リンクの 40分ぐらいから)。

ベラルーシでは、測定環境が整っていて、汚染地域にあるほぼすべての学校に測定器が備え付けられており、誰でも無料で食品を検査できるそうだ。そこで、ある女性が、近所の農家からもらった野菜と牛乳を測定しに行くというものだ。

ベラルーシ1

ベラルーシ2

まず、1 つ確認できたことは、ベラルーシの牛乳の基準が 100 ベクレル/キログラムだということだ。日本の牛乳の基準値は 200 ベクレル/キログラムだが、べらぼうにゆるいというわけではなさそうだ。日本の基準値が暫定であることを考えれば、むしろ妥当なレベルだろう(そろそろ「暫定」ではない基準値を決めて欲しいところではあるが)。

これに対する測定者(おそらく物理の教師)と女性のコメントである。

ベラルーシ3

ベラルーシ4


驚いたのが「25.72 ベクレル/キログラムで安心」という感覚だ。日本では「1 ベクレルでもだめ」という風潮が蔓延しており、僕自身も暫定基準値の 1/10 程度を目安にしていたのだが、この女性がベラルーシでの一般的な感覚を持った人だとすれば、それすらも厳しすぎたということになる。頭をハンマーで殴られたような衝撃だ。


もうひとつ驚いたのが、測定器にカリウム 40 が 298.6 ベクレル/キログラムと表示されていることだ。これは天然放射性物質のひとつである放射性カリウム 40 のことだが、当然これも放射線を出す。放射性カリウムの実効線量係数はセシウム 137 の約半分なので、被曝量は約150ベクレルのセシウム137に相当する。つまり、この牛乳を飲んだ場合、

カリウム 40 からの被爆量はセシウム 137 からの被爆量の 6 倍近くになる。
(※)

前に、原発事故以前から天然の放射性物質をどのくらい食べているのか計算したが、やはり結構入っているという感想である。日本の牛乳にも同程度のカリウム40が含まれているのだとすれば、セシウムが 20 〜 30 ベクレル/キログラム程度なら、カリウム40からの被爆のほうが断然多いことになる。

宮城県の原乳の測定結果は、不検出になったり数ベクレルになったりと多少の上下を繰り返しており、そのたびに一喜一憂する人も多いと思うが、このベラルーシの女性の感覚や、天然放射性物質との比較が、ひとつの参考になるのではないかと思う。


それにしても、だれでも無料で測定できるとはうらやましい。日本でも早くこういった環境を整えて欲しいものだ。そうなれば、家庭菜園をやっている人や釣りを趣味にしている人なども、流通ルートに乗らない食品を安心して食べることができるのだが、そうなるのはいったいいつだろうか。


※ この牛乳を 1 Kg  (約 1 リットル) 飲んだ場合の被爆量は、

セシウム137から: 25.72*0.013 = 0.334 マイクロシーベルト
カリウム 40 から: 298.6*0.0062 = 1.85 マイクロシーベルト

(いずれも経口摂取、成人の場合)

at 16:04, greenlig, 放射線

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宮城県の村井知事「500ベクレル以下ならどれだけ食べても全く問題がない」

 
宮城県の村井知事は、牛肉の出荷再開についての記者会見で、検査証明書に検出値を表記するのかとの記者からの質問に対し、次のように回答した。

「安全であるということだけでよろしいかと思っております。健康上全く問題のない数値であるわけですので、詳細な数値を出したところで消費者の皆さんは理解ができないわけでありますから、安全か安全でないかということだけはっきりと証明すれば十分だというふうに思っております。(中略)(1キログラムあたり)500ベクレル以下であるということであります。その証明書がついていれば(1キログラムあたり)500ベクレル以下で、どれだけ食べても全く問題がないということであります。」

この発言が、ネット上で痛烈に批判されている。「理解できない」とは消費者を馬鹿にしているとか、500ベクレル以下ならどれだけ食べてもOKとはアホかと言われているのだ。

この発言を言葉どおりに受け取ればたしかにそうなるだろうし、県外、特に東北や関東などの放射能汚染された地域以外の消費者から見れば、上のような反応になるのはわかる。しかし、県外だけでなく県内にも批判する人がいることには違和感を感じる。


もちろん、500 ベクレル以下であっても放射性物質など含まれていないほうがいいに決まっているし、同じ基準値以下でも、499 ベクレルと 10 ベクレルでは、気分的にもリスク上も大きな差がある。消費者の観点からは、数値を表示してくれたほうがいいことは確かだ。

ただし、宮城県のトップである知事の発言として見た場合、これ以外の回答はありえないだろう。

そもそも、暫定基準値は国が決めたもので、基準値ぎりぎりの食品を 1 年間食べ続けても (建前上は) 健康に影響がないとして決定したものだ。つまり、普通の量ならどれだけ食べても大丈夫と国がお墨付きを与えているわけで、知事は単にそれを繰り返しただけだ。僕自身がこれまで県や市などに確認している中でも、国の認識を一地方自治体が覆すことは困難なようだ。

詳細な数値を出さないことについても、消費者の立場としては当然表示してほしいわけだが、実際に

「セシウム300ベクレル入り」

と書かれた牛肉がスーパーの食肉コーナーに並んでいたら買うかと聞かれれば、素直にイエスとは言えない。数値を表記するということは、わざわざ

「うちの牛肉には、基準値よりは少ないけれども、ある程度の量のセシウムが入ってますよ」

と宣伝するのと同じだ。一般企業であれば、わざわざ自社の商品が危険だと触れ回る社長がいたら、即刻クビである。そういう観点から見れば、トップとしてこのように発言するのはむしろ当然と言える。

数値を表示したとしても、そのせいで売れなかった分を国が補償してくれるわけではない。

「県が勝手に数値表示したのだから、県で補償しろ」

と言われるのがオチだ。補償もされないのに、あえて自滅することはできるはずがない。

また、いったん牛肉に数値表示を義務付けてしまったら、次は「米や魚も数値表示しろ」という話になる。そうなれば、すでに津波で壊滅的な被害を受けた宮城県の農業や水産業は、立ち上がる力を失うだろう。

そういうことがわかっているから、知事はこのようにわざと「すっとぼけた」発言をしているのだろう。つまり、生産者を代表する立場からは、

「基準値以下なので安全です。どんどん食べてください」

としか言えないのである。もし、

「宮城の牛肉も、米も、魚も、野菜も、すべて多少の放射性物質が入っていて危険なので、全国の消費者の安全を考えて、数年間いっさい出荷しません」


という知事がいたら、ノーベル平和賞はもらえるかもしれないが、知事としては失格である。宮城の利益を一番に考える言動は、
他県の人から見れば批判の対象となるのもわかるが、それを身内である宮城県民が批判するのはおかしいのだ。

普段からネットで「ワケルくん」などとバカにされている村井知事だが、この発言を見ただけで、県民の生活を第一に考えていること、その垢抜けない外見とは違い以外としたたかな人物であることがわかる。

2011/9/8 全体を加筆修正

at 11:03, greenlig, 放射線

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世界は変わってしまった

津波の被害を受けた亘理町のイチゴ農家が塩害にもめげずにイチゴ栽培に挑戦との記事が掲載された。本来なら、復興に向けてがんばっている人の記事として肯定的に受け止められるはずだ。しかし、ネットでの反応は正反対だ。収穫されたイチゴが放射能で汚染されるとの不安から(実際には土を使っていないので問題ないはずだが)、ネットには

「今すぐにやめろ 」
「犯罪者」
「キチガイ」


との書き込みがあふれている。何とも嘆かわしいことだ。

この現象は農業だけではない。漁業でも同じことだ。三陸の漁師の多くが津波で家も船も流され、ある者は借金をし、ある者は遠方から寄贈された中古船を使って、何とか漁を再開しようとしている。そういう人たちも同じように批判にさらされている。

しかし、被爆したくないからといって、わずかでも汚染された食品を出荷する生産者を非難するという考え方は、突き詰めれば、

「自分さえ助かれば農家や漁師なんか死んでもかまわない」


ということだ。

農家も漁師も生きていかなければならない。県の調査で基準値以下だとされ、東京電力や政府からの補償がない以上、野菜や魚を売るしかない。しかし、それ以上に、ここで農業や漁業の灯を途絶えさせてはいけないという使命感に燃えている。

放射能汚染は数十年から 100 年単位で続くことが予想されている。仮に東京電力や国からの補償があっても、いったん耕作を放棄した田畑は荒れ果て、次世代を担う若い農家や漁師は育たず、数十年後に再開しようと思っても再開は不可能になる。

「汚染された食品は政府が買い上げるべき」との意見もあるが、いくら国が買い上げてくれるからといって、廃棄されるとわかっているものをわざわざ作ろうという生産者はいない。短期的にはよくても、中長期的には産業が衰退してしまう。

「このままでは東日本の農業と水産業は壊滅する」

という思いで、農家や漁師はがんばっているのだ。


日本で生産できる食料の量は決まっている。誰かが西日本の食品を買えば、他の誰かが東日本の食品を買わなければならない。当然西日本の食品の価格は高騰し、品薄状態になる。スーパーに買い物に行くと、野菜の産地の混ぜ売りが増え、22 年産の米が消えかけているのがわかる。

外国から食糧を輸入するにしても、世界中の貧困層や、アフリカの大干ばつで飢餓に苦しむ人から食料を奪う行為につながりかねない。また、外国からの輸入食品に対するセシウムの基準値は 370 ベクレル/キログラムであり、特に欧州やロシアから入ってくる食品には東日本産のものと同程度の放射性物質が含まれている可能性もある。


復興のためを思って東日本の食品を買っている人は、被爆しても大丈夫という楽観論者がすべてではない。将来ガンになる危険が高まるかもしれないと知っていて、それでも地域のためを思って地元のものを食べている人もいる。

「子供を守るため」とは言っても、東日本の産業が壊滅すれば、その子供が大きくなったときの日本は、いったいどうなっているだろうか。仕事も食料もなく、三流国家となった日本で貧しい暮らしを強いられることにならないのだろうか。そう考えたとき、

大人は多少の汚染食品を食べるべきだとする京都大学の小出裕章氏の主張には、心を動かされるものがある。

最後に、小出氏の言葉を引用する。

3月11日を境にして世界は変わってしまいました。(中略)どんな食べ物も福島から放出された放射能で汚れてしまっているわけです。ですからその汚染した食べ物をどのように分配するのかという選択しか残されていません。」


「3月11日を境に世界は変わったのです。私たちがこの日本という国をどのようにつくっていきたいかということを考えたときに私はやはり一次産業を支えたいと思いますし、子どもには汚染の食品を食べさせたくないと思いますので、原子力をここまで許してきてしまった大人、放射能の汚染を許した大人がどうすべきなのかということを、やはり皆さんに考えて欲しいと思うし、考えるためのまず条件、ここまでどれがどれだけ汚れてるということを日本の国と東京電力にきちっと表示させるようにさせたいというのが私の願い、です。」


「被曝というのは必ず危険ですから、被曝に関して大丈夫とか安全とかいう言葉を使ってはいけません。ですから大人が、わたくしは大人に食べてくださいと言ってるわけなんですけれども。大人の人にとっても大丈夫なんていう被曝はありませんし安全な被曝はありません。ただ世界が変わっていってしまった以上それを引き受けるしかないと私は思っています。」


『7月20日 汚染食品の流通に反対しない真意 小出裕章
『今後解放されることはないセシウム汚染とその対策 小出裕章

※ 2011/9/8 タイトルと内容を大幅に書き換えて再公開

at 06:25, greenlig, 放射線

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「汚れているのは土なんです」by ナウシカ

 
早場米の価格高騰、米問屋の売り控えが連日報道されている。それを見てパニックになった人たちが、玄米の買占めに走っているようだ。これは、震災直後に東京で水や食料の買占めが起きたのとまったく同じ現象だ。また、こちらのように、古米の買占めを勧めている「専門家」もいる(※1)。

そもそも、みんないったい何年分の米を買うつもりなのだろうか。玄米を買ったところで、一般家庭ではせいぜい 1 年ぐらいしか保管できない。これに対して、セシウム汚染はこの先何十年も続く。たった 1 年乗り切ったところで、どうにもならないのだ。

前に書いたように、汚れているのは土だ。土の中のセシウムが根から吸い上げられて一部が米に入る。だから、土の汚染度を調べれば米の汚染も予想できる。そこで、宮城県は、米の作付け前に県内全域で水田の土壌調査を行った

その結果、県内でもっとも汚染がひどかったのは柴田町だが、この水田で採れた米を 1 年間食べても、被爆量は 0.019 ミリシーベルトにしかならない(※2)。それ以外の地域の米ならもっと低くなるはずだ。

同様の検査は、福島県でも、栃木県でも、茨城県でも行われている。その結果、基準値を超える土壌汚染が見つかっているのは、飯舘村や浪江町など、原発にごく近い地域だけだ。

その程度の被爆を避けるために、今年は古米を買い、来年は古古米を買い、再来年は古古古米を買う (以下省略) のが良いのだろうか。

そこまでしてまずい古米を食べるというのであれば、それはその人の自由だが、人はいつ死ぬかわからない。少しならセシウム入りでもうまい新米を食べたほうが、精神的にも、農家のためにもいいと思うのだが。



※1
この人は玄米をそのまま食べるのが好みなのか、精米で放射性物質が減ることを考えていないようだ。

※2
精米により放射性物質が35%に減少し、年間60キロを食べるとして計算すると、

68.4*0.35*0.000013*60 = 0.019 ミリシーベルト


at 12:13, greenlig, 放射線

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ガンは増えているのか

現在、日本人の2人に1人がガンになり、3人に1人がガンで死ぬと言われている。そのためか、
 
「1950 年代から現在までガンは増えるいっぽうだ。これは、米ソ核実験によって放射性物質が世界中にばら撒かれたからだ。だから今回の原発事故でもガンが増える」

という話を信じている人がいるようだ。本当にそうだろうか。

たとえば、次のグラフを見て欲しい (クリックで拡大)。

ガンの数1

出典:国立ガン研究センターの「がんの統計 '10」の図表10

これは、死因別の死亡率を示したもので、「悪性新生物」となっている赤いラインがいわゆる「ガン」だ。これを見ると、1950 年から増え続けているように見える。では、次のグラフを見て欲しい。


ガンの数2

これは、同じ資料の図表11だ。これを見ると、男性(赤い実線)ではガンがほぼ横ばいで近年は減少傾向にあり、女性(赤い点線)は徐々に減っていることがわかる。

いったいどっちのグラフを信じれば良いのだろうか。


ガンが増えたかどうかを見るには、全人口の中からサンプルをランダムにたとえば 10 万人選んで、そのうち何人がガンで死んだかを比較する必要がある。しかし、1950 年代は高度成長期に入った頃で、「子供ばかりいた」時代だ。それに比べて今は医学が進み、高齢化社会、つまり「老人ばかり」の時代だ。平均寿命の推移は次のとおりだ。

男性 女性
1975 71.73 76.89
1980 73.35 78.76
1985 74.78 80.48
1990 75.92 81.90
1995 76.38 82.85
2000 77.72 84.60
2005 78.56 85.52
2009 79.59 86.44



子供はガンになりにくい
から(※1)、死んだ人の中に子供が多いと、死因に占めるガンの割合は低くなる。これに対し、高齢者はガンになりやすいから、死んだ人の中に高齢者が多いと、死因に占めるガンの割合が高くなる。そのため、選んだサンプルの中に子供が多いのか老人が多いのかを考えなければ、正しい比較はできない。

つまり、世代構成が異なる昔と今のデータをそのまま比較しても意味がないわけだ。そこで、それを比較できるように標準的なモデルに調整するのが「年齢調整」だ。「昭和60年モデル人口」などを基準にすることが多いようだ。


上に挙げた 2 番目のグラフは、この年齢調整を行った後のグラフなのだ。「ガンが増えているか」を判断するには、2 番目のグラフを見る必要がある。


結局、1 番目のグラフでガンが増えているように見えるのは、実は

医療が進んで寿命が延び、ガン以外で死ななくなった結果、死因に占めるガンの割合が大きくなった

ということのようである。本来ガンになるはずのない若い世代の人までがガンで死んでいるのであれば、2 番目のグラフも右肩上がりにならないとおかしいからだ。

極端な話、さらに医学が進んで、ガン以外の病気や怪我ではいっさい死ななくなったとしたら、死因の100%がガンということになるが、それは「ガンが増えた」のとは違うのだ。

※ 2011/9/5 追記
参考リンク:
「がんになりやすい人 なりにくい人」の「年とともにがんになりやすくなる」の項
「そもそもがんとは何か──番外篇(その2)」team nakagawa


at 08:56, greenlig, 放射線

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被爆を避けるためなら死んでもいい?


人生にはさまざまなリスク (危険) がある。長生きをしたければリスクを最小限にする必要がある。リスク回避の原則は、次のようなものだ。

1.考えうるリスクをすべて列挙する。
2.列挙したリスクのうち、深刻度に応じて優先順位をつける。
3.優先順位が高いものから対策を実施する。

今回、リスクの 1 つとして「放射能」というものが加わった。しかし、放射能を過度に危険視し、放射能に関することならほんの小さなことでも避けようとするあまり、かえって大きなリスクが生じることもある。極端に言えば、

「被爆を避けるためなら死んでもいい」

となってしまいかねない。


一般に、放射線を浴びるとガンのリスクが高まるとされている。このリスクと、放射能を避けようとする行動から生じるリスクを天秤にかける必要がある。以下では、後者のリスクについて考える。こじつけのようなものもあるが、とにかくすべて列挙する。


遠くに逃げることによるリスク

転職、転居などのイベントは「ライフイベント」と言われ、ストレスが増える原因と言われている。環境が変わると、それに慣れるまでストレスを感じるためだ。よく、「死んだ旦那の後を追うように奥さんも他界した」という話を聞くが、これはストレスによるものと考えることもできる。上記リンク先では、「配偶者の死」が最高のストレス強度になっている。ストレスはいろんな病気を引き起こすが、ガンもそのひとつと言われている。

また、夫が東日本に残り妻と子供だけが西日本に避難するというケースでは、別居によるストレス、生活の場が2重になることによる経済的困窮、子供の精神面への影響が懸念される。

さらには、移動時の事故、航空機で移動する際の被爆のリスクもある。


放射性物質入りの食品を避けることによるリスク

牛乳、野菜、魚、肉などの必要な栄養素が不足することで、子供の発育障害、栄養失調が考えられる。野菜不足もガンの原因になると言われている。

そうならないよう、子供を心配する母親はスーパーを何件もはしごし、西日本や北海道産の食品を捜し求めているが、思うように入手することは困難で、それ自体がストレスになっている。

また、海外から輸入された食品には、成長ホルモン、抗生物質、残留農薬の危険がある (もちろん「基準値以下」ではあるが)。これらはいずれもガンの原因とされている。アメリカ牛肉の BSE 問題、中国産ウナギの抗菌剤、農薬入りギョウザ事件も記憶に新しい。安易に外国産に走ることもできない。

さらに、みんなが西日本産の食品に群がることで、価格高騰、食料不足に陥る可能性が高い (もうすでにそうなっている)。

最後に一番大きなリスクが、東日本の一次産業が壊滅的な打撃を受けるというリスクだ。一次産業(農業や漁業)が衰退すれば、やがて二次産業(工業など)、三次産業(サービス業など)も衰退する。原発から離れた場所にいる人は関係ないと思っているかもしれないが、やがて確実に自分の身に跳ね返ってくる。


放射能を過剰に怖がることのリスク

たとえば、夏の時期に子供に長袖長ズボンの運動着で体育をさせた場合、熱中症で倒れて死ぬ確率のほうが、放射能で将来ガンになって死ぬ確率よりも高い。


子供をプールに入れないことのリスク

子供が将来レジャーや船舶の事故などでどうしても泳ぐ必要が出たときに、泳ぎが苦手なために死ぬリスクがある。

学校給食を食べさせないリスク

みんなと同じものを食べないということで、子供がいじめに遭うリスクがある。そうならないまでも、少なくとも疎外感は感じるはずだ。子供は自分だけみんなと違うということを非常にいやがるものだ。口には出さなくても、「どうして他のみんなは給食を食べてるのに自分だけ弁当なのか」という気持ちは持つだろう。そして、親も自分の子供がそう思っているのではないかとうすうす気づく。親子双方にとってストレスになる。


これらのリスクは、確率的にはどれも小さく、あえてこじつけのようなものも挙げてある。「そんなに確率が小さいことまで考えていられない」と思うかもしれない。しかし、放射能でガンになる確率も同様に小さいのだ。

あらゆるリスクを列挙し、もっとも影響が大きなリスクから対処していくというリスク管理の原則に立ち、放射能が最大のリスクなのか、ぜひ考えて欲しい。

2011/9/6 表現を若干修正

at 16:52, greenlig, 放射線

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報道ステーションが流したデマ「卵から60ベクレルの放射能」


「卵から60ベクレル検出で卵もアウトになった」


との話がネット上を流れている。この話の出所を見ると、どうやら報道ステーションのようだ。こちらで動画を見ることができる。

この報道には、次の2つの間違いと不正確な点がある。

1. ウクライナの基準についての誤解
2. 測定機器の精度


番組ではまず、養鶏場の男性が持ち込んだ卵の測定結果が 60 ベクレルだと伝えた。そして、ウクライナの基準は 6  ベクレルだと言う。ウクライナの基準の 10 倍もあるから、とんでもないということらしい。

しかし、画面に写った測定結果の紙を見ると、単位が Bq/Kg になっている。つまり1キロあたりのベクレル数だ。これに対してウクライナの基準は卵1個あたりの基準値だ (こちらの動画の14分40秒あたりと、こちら)。卵1個が 50 グラムだとすれば、ウクライナの基準は 120 ベクレル/Kg となる。つまり、今回の測定結果である 60 ベクレルは、ウクライナ基準の 2 分の 1 しかなく、安全だと言えるレベルだ


さらに、測定機器の問題がある。測定を行った「市民放射能測定所」が使用しているのは LB200 (値段は 100 万円ほど) という機器のようだが、これは、言ってみれば線量計を鉛で囲った簡易測定器で、国や地方自治体が使用している 2,000 万円もするようなゲルマニウム半導体検出器と違い精度も低い (※)。

この測定機器では放射性核種を区別できないから、食品に含まれているのが、人工放射性物質なのか天然放射性物質なのか区別できない。そのため、カリウム40 などの天然の放射性物質を含んだ値になる点も差し引いて考える必要がある。測定値 60 ベクレルのうち、セシウムの分がどれだけなのかわからないのだ。すべてがカリウムという可能性もゼロではない。番組中で「セシウム」という言葉が出てこないのはそのためだろう。この点についても何も説明がなかった。

政府や自治体の放射能測定が不十分であるという現状を踏まえれば、市民放射能測定所の活動自体は評価できるが、使っている機器の精度には限界がある。その測定結果は、国や自治体から発表される高い精度の数値よりも大ざっぱなものだということを念頭に置く必要がある。たとえて言えば、

ケーキを作るときに小麦粉や砂糖の量を体重計で計量するようなものだ。

ケーキを作るときには計量がとても重要だ。大ざっぱな量しかわからない体重計で材料を計量しても、いちおうケーキらしきものはできるが、うまく膨らまなかったり、作るたびに味が変わってしまうだろう。それがその測定器の限界である。


こういう間違った報道で卵が売れなくなることが心配だ。そうなったらテレビ朝日は責任を取るのだろうか。


※ この機器が使用している NaI シンチレーションによる測定方法は、国の『緊急時における食品の放射能測定マニュアル』では、より正確な測定を行うべきかどうかを判断するための第一段階の測定と位置付けられている。LB200では鉛で囲うことでバックグラウンドを排除しようとしているが、国のマニュアルではバックグラウンドの平均値を測定結果から引くこととなっており、原理的には同じことである。

at 16:30, greenlig, 放射線

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暫定基準値見直し検討へ

今日、 「生涯累積線量、百ミリ・シーベルト未満に…答申」との記事が各マスコミから公開された。一部引用する。

食品の放射性物質の影響について検討している内閣府食品安全委員会の作業部会は26日、「自然からの放射線量を除き、生涯に受ける累積線量は1人当たり100ミリ・シーベルト未満に抑えるべきだ」とする厚生労働省への答申案をまとめ、発表した。

生涯で 100 ミリシーベルトということは、100 歳まで生きるとすると年間 1 ミリシーベルトということになる。これまでの暫定基準値は、ヨウ素とセシウムが基準値ぎりぎりまで入った食品を1年間食べ続けたときに 10 ミリシーベルトの被爆量になるように設定されていたから、それと比べれば 10 分の 1 だ。かなり厳しい基準と言って良いだろう。

記事では、「すぐに食品の規制値見直しに取りかかるのは困難」と書かれているが、いずれは今までの 10 分の 1 程度に基準が引き下げられることが期待される。これは、当ブログで提唱してきた、「基準値の1/10という基準」とも合っている。

もし基準値が今の 10 分の 1 になれば、「基準値以下なので安全です」と胸を張って言えるようになるだろう。歓迎すべきことである。


しかし、良いことばかりではない。基準値が下がれば、出荷できない農産物、海産物がかなり増える。それを補償するとなれば、電気料金や税金の形で国民が負担することになる。

また、今回は食品からの内部被曝の話だが、この「外部と内部で生涯100ミリ」という基準がスタンダードになると、空間線量が 0.11 ミリシーベルト/時を超える地域では、外部被曝だけで年間 1 ミリシーベルトを超えるから、福島の大部分、宮城と茨城の一部、もしかしたら東京の一部も住めないことになる。「どうして疎開させないのか」という声が高まることが予想される。


とは言え、現在の食品の放射能をめぐるパニック状態を解消するためには、基準を引き下げ、検査を徹底するしかなく、その第一歩にはなるだろう。


at 16:24, greenlig, 放射線

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「放射能は足し算」をめぐる誤解

「放射能は足し算」

という言葉をよく聞く。しかし、その意味を誤解している人がいるようだ。

この言葉の意味は、「放射性物質が5ベクレル入った野菜を食べ、10ベクレル入った水を飲めば、15ベクレル摂取したことになる」ということだ。また、総被曝量は「内部被曝と外部被曝を足した量」だから、そういう意味でも足し算である。

しかし、この言葉を、

「放射能は体に溜まるいっぽうで減ることはない」

と誤解している人がいる。実際には、体に取り込まれた放射性物質はいつかは尿などとして出て行く。セシウムなら数十日から100日程度で半分が体から出ていく。代謝が高い子供はもっと早い速度で出て行く。これを生物学的半減期と言う。


そういう意味からすれば、

「放射能は引き算もされる」

ことになる。

「放射能は足し算」が叫ばれているのは、国がよく「このほうれん草を1年間食べ続けてもxxミリシーベルトを超えないので安全だ」という言い方をするからだ。人間はほうれん草だけを食べるのではない。水も飲めば米や肉も食べる。それらの汚染をすべて「足し算」しないと本当の危険はわからないのに、ほうれん草1つだけを取り上げて「安全」というのはおかしいというわけだ。


at 13:54, greenlig, 放射線

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自然放射能ふたたび

人工放射能は自然放射能よりも体に悪い」

という説がある。それはある程度は本当だ。だが、自然放射能なら安全かというとそういうわけでもない。ではその差はどの程度だろうか。以前も書いたが、わかりにくい話なのでもう一度説明する。

放射線はにたとえることができる。放射性物質は光を出す砂粒のようなものだ。この砂粒の中には、種類によって強い光を出すものと弱い光を出すものがある。たとえば、自然界にある代表的な放射性物質のカリウム40に比べて、原発から飛んできた人工のセシウム137は2倍強い光を出す(※1)。つまり、この2つに関して言えば、

「人工のセシウム137は天然のカリウム40よりも2倍危険」

ということになる。しかし、たかだか2倍である。自然放射線よりも人工放射線のほうが圧倒的に毒性が強いというわけではない。カリウム40を2ベクレル食べればセシウム137を1ベクレル食べたのと同じだけ被爆する。

人工放射能も自然放射能も体に悪い」

ということになるだろう。

われわれは、これまでもカリウム 40 をはじめとする天然の放射性物質を結構食べてきた。その量は年間 0.41 ミリシーベルトで、セシウム 137 に換算すると 1 日に 86 ベクレル分に相当する。人間の体は、この程度の被爆なら防御する力が備わっていると考えられる。(※2)

もちろん、追加でたとえば暫定基準値ぎりぎりの 500 ベクレルを摂取するとなると、自然の被爆よりもかなり増えるので、大丈夫とは言えないかもしれない。だが、1 日にすでに 86 ベクレルのセシウムに相当する天然の放射性物質を食べていることを考えれば、あと 20 〜 30 ベクレルぐらいなら体が耐えてくれるのではないかと思うのは、むしろ自然な考えだろう。


現在新米の放射性物質が話題になっているので、米の例で考えてみる。

たとえば、セシウムが 50 ベクレル入った玄米があるとすると、精米することで放射性物質は 1/3 に減るので (こちらの資料の表3-1-24)、白米にすると 17 ベクレルになる。白米には元々 33 ベクレル程度の天然のカリウム 40 が含まれているから(※3)、セシウムからの放射能の強さとカリウムからの放射能の強さがちょうど同じということになる。つまり、放射能の強さは、原発事故前の 2 倍になったということだ。

これを「2 倍にもなった」と思うのか「2 倍にしかなっていない」と思うのかは各人の考え方次第だが、いずれにしても、たとえセシウムがゼロだとしても被爆量がゼロにならないことは確かだ。



※1「2倍」としている根拠は、実効線量係数が約2倍であることだ。実効線量係数では、核種ごとのエネルギーや物理的半減期に加えて、各臓器への影響度合い、生物学的半減期が考慮されている。


※2 もちろん、この自然被爆がガンの一因になっているという可能性はあるが、少なくとも原発事故以前は話題になっていないことから、主な要因ではないと考えるのが妥当だろう。


※3 Wikipedia の「カリウム40」の項目
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%AA%E3%82%A6%E3%83%A040

9/11 内容を修正して再公開

at 16:37, greenlig, 放射線

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